あるポイントを保有する顧客が、そのポイントを他社のポイントに交換することがあります。その際には、元のポイントを発行した事業者から、交換後のポイントを発行する事業者へとポイントに相当する金額が支払われることになります。このポイント交換取引に伴い、交換後のポイントを発行した事業者が受領した金銭について、消費税の対象外とする判決が大阪高裁で出され、そのまま確定となったそうです。

1 いきさつ

報道等で確認できたところでは、問題の訴訟は、ポイント交換により他社からポイント相当の金銭を受け入れた事業者が起こしたもの。当初、この事業者はこれを消費税課税の取引として申告していたところ、その後に課税取引ではないとして更正の請求をし、認められずに訴訟に至りました。この訴訟において、事業者は、問題の取引を、ポイント交換がされたことによる、将来のポイント利用の原資となる精算金の受入と説明し、一方で国側は、ポイント交換により対象者に自社ポイントを付与し、自社のポイントサービスに受け入れた役務提供の対価としていました。大阪高裁では、精算金であり対価性なしという判断がされました。国側は上告等せず、この判断が確定となったということです。

2 国税庁による共通ポイント制度処理例の公表

ポイントに関しては、ごく最近、2020年1月に、国税庁が「共通ポイント制度を利用する事業者(加盟店A)及びポイント会員の一般的な処理例」を公表しています。そこでは、加盟店がプログラムの運営者に支払う金銭が消費税対象外、対価性なし、と説明されていました。
「例」であり、制度の規約等の内容により異なる扱いも考えられると付記されていますが、ようやく1つの考え方が示されたというところです。

3 ポイント取引の消費税の取り扱い

ポイント自体は既に長く利用されており、2000年頃には複数企業を含めた共通ポイントのプログラムも一般的になっていましたが、税務上の取り扱いは明確にされていませんでした。

実務上は、自社のみのポイントプログラムと他社との共通ポイントプログラムとを区別し、共通ポイントプログラムに関連した取引は、その昔の「スタンプカード」制度の取引に倣って取り扱っていました。ポイントプログラムの運営会社はプログラムの運営というサービスを提供し、加盟する各事業者(通常は店舗)はこのサービスを利用する、という考え方で、これによれば運営会社と加盟店との間の取引は消費税の課税取引ということになります。
ただ、この運営会社・加盟店間の取引はポイントプログラムに関連する一連の取引の一部にすぎません。ポイントを発行する事業者は特に、ポイントが顧客に付与されてから、最終的に利用がされるまでの一連の取引を通じて、最終的にどの部分が課税の対象となり、いくら納税されるのか、その過程の税額控除がどう機能するのかも意識する必要があります。
当初はスタンプカード制度で説明できたポイントプログラムも、その後さらに利用が進んで他社ポイントとの交換が盛んになり、時には電子マネーとの交換も行われるようになると、スタンプカード制度のようなサービスの提供では説明が難しい部分も出てくるようになり、頭を悩ませることもありました。

4 個々の契約や取引により判断

今回の大阪高裁の判断は、あくまで訴訟の対象となったポイント交換取引の内容や条件をふまえてなされたものです。同様の取引があったとしても、その消費税の扱いは、その取引の条件や内容を考慮して判断する必要があるようです。
そうは言っても、実際に消費税の対象外と扱われることがありうること、そしてその判断根拠が示されたことで、取り扱いの見直しが進んでいくのではないかと思います。
長く「スタンプカード」の延長で取り扱ってきたこともあり、対価性なしとされるのは意外ではあるのですが、ポイントがスタンプカードの世界を超えて発展したのも確かです。今のポイントの実情に応じた取り扱いが整理され、広く認識されていくようになればと思います。