消費税のインボイス制度開始まであと9カ月ほど。国税庁は、「適格請求書発行事業者公表サイト」を開設し、適格請求書発行事業者の情報を提供しています。

インボイス制度開始後は、仕入税額控除は適格請求書に基づいて行うことになります。そうなると、請求書を受領した際に発行者が適格請求書発行事業者であるか否かにより、経理方法が変わってきます。請求書の発行者によっては、請求書の記載事項のみでは判断せずに、まず適格請求書発行事業者であるかの確認が必要となることも考えられます。

公表サイトの利用方法

国税庁は「適格請求書発行事業者公表サイト」を開設し、適格請求書発行事業者の情報を提供しています。当初、このサイトについて聞いた際には、このサイトで請求書の発行者が適格請求書発行事業者であるのかを確認できるのだと思っていました。
ただ、実際の公表サイトの仕組みは異なっています。登録番号を入力すると、その登録番号の事業者の情報が表示され、確認できる、という仕組みです。公表サイト上のFAQでは、請求書等に記載されている登録番号が取引時点において有効なものかを確認するためのサイト、と説明されています。

名前からの検索について

事業者の情報、具体的には氏名や法人名から検索できる機能についての希望も出されているようですが、東京税理士会等と東京国税局の協議会での議論によれば、そうした機能が追加されることはないようです。公表サイトのFAQでは、氏名や法人名から検索できない理由として、そもそも公表サイトの目的は登録番号の有効性を確認することであるため、また、氏名や法人名により検索した場合、同名の複数の事業者が表示されたり、氏名等の表記が複数考えられる事業者について正しい結果が表示されなかったり、という事象が考えられ、そのような問題を避けるため、と説明されています。

上記のような問題とは異なりますが、自分自身のクライアントのうち、ある程度名前の知られている方について考えた場合、登録番号を知らせている取引先以外も、誰でも名前だけで検索して状況が確認できるというのは、少々抵抗感があります。適格請求書発行事業者であるかどうかは隠さなければいけない情報ではありませんので、公表に関する感じ方は個人によると思いますが、無関係の人にまで公表する必要はないだろうと感じる方もいるでしょう。この点を考えると、一般への公表サイトとしては、現在の仕様でやむを得ないのだろうと思います。
いずれにせよ、制度が開始した後、情報を公表することの利便性について議論が進めば、仕様も変わっていくかもしれません。

公表サイトで提供される情報

なお、現在、公表サイトで確認できる情報は、以下のようになっています。
  法人:法人名、本店又は主たる事務所の所在地、登録番号、登録年月日、登録取消(失効)年月日
  個人事業者:氏名、登録番号、登録年月日、登録取消(失効)年月日

個人事業主については住所は非公表。本人が希望すれば、屋号や事務所の所在地を公表することができます。
(人格のない社団についても、概ね個人事業主と同様の扱いとなっています。)