建物とその敷地を同時に購入した場合、対価を建物と土地に区分する必要があります。減価償却をはじめ、税務上は建物と土地とで取り扱いが異なる規定があり、取得価額を建物部分と土地部分とに区分することは非常に重要です。最近関わったケースで、この建物と土地の区分が明らかにおかしな状態で計算がされていて、少々困った例がありました。改めて考えてみると、自分自身も、不動産が国外にある場合には情報収集に手間取ったこともあったように思います。

建物と土地を同時に取得した場合、通常は次のように区分します。
1. 売買契約書の金額に従う。
対価が建物と土地とに区分されていることもあります。対価は合計額のみでも、消費税額の記載があれば、これに基づき建物部分の金額を把握できます。
2. 固定資産税評価額で按分する。
売買契約書等で確認ができない場合、一般的に採用されている方法です。

 

外国の不動産を取得した場合も考え方は同じです。ただ、情報の依頼の仕方により注意を払いますし、確認にも時間をかけます。だいたい、以下のようなプロセスをふみます。

1. 取得した資産についての確認
不動産を取得した方からは、建物を取得したと説明されることが多いです。敷地についてはどのようになっているのか、所有しているのか、借りているのか、こちらから質問することで明確になります。
この段階は国内・国外問わず行うことですが、国外不動産については特に重要に感じます。この部分を早めに明確にできれば、実際の情報収集を効率的に行うことにつながるからです。

2.  根拠資料の確認
説明された取得状況をふまえて、売買契約書、購入前に不動産業者等から提供された物件の資料、決済関係の書類、権利関係の書類などを確認していきます。不動産の所在する場所により、提供される書類も様々なので、提供いただけるものは一通り確認します。
意外に役に立つのが、購入前に不動産業者等から提供される物件資料です。物件に関する主な情報がコンパクトに記載されていますので、ここであたりをつけてから、複雑な契約書などを効果的に確認していくことができます。
敷地を取得したかはこの段階で確認できますが、対価が建物と土地とに区分されていたケースは少なかったように記憶しています。

3. 按分に関する情報の確認
まず、不動産が所在する現地ではどのように区分しているのかを確認します。特に賃貸用不動産の場合は、通常現地でも税務申告を行うため、現地で記帳を行っていることも多いです。入手が可能であれば、現地の会計事務所などが作成した取得価額や減価償却の計算資料を確認します。日本の税法の基準とは異なるルールによっているため、そのまま使用できるわけではありませんが、少なくとも取得価額の按分については、経済的な価値により配分するのが合理的であり、現地の計算方法が基本的に妥当だろうと考えています。

最近目にしたケースでは、現地の専門家が建物、土地の税務上の評価額で対価を按分しており、その計算結果をそのまま採用することができました。
そうかと思えば、過去に扱ったケースで、現地の固定資産税評価額を聞いたところ、土地の評価額はゼロと説明されたこともあり(敷地のみの価値はみない、といったような説明でしたが、単に敷地単独での評価を行っていないということだったのかもしれません)、さすがに土地の価値がないということもないだろうと、扱いに少々悩みました。

日本の税務上の扱いからみて極端に思われる場合には、現地の考え方をふまえつつ。日本の税務でも受け入れが可能な按分方法を、さらに考えていくことになります。