このところリモートワークに関連したお問い合わせが増えており、そのひろがりを実感しているところです。クロスボーダーの事例ももはや珍しくありません。

クロスボーダーの場合、給与を受ける側が居住者であるか、非居住者であるかをまず確認します。さらに居住者であっても非永住者であると、取り扱いがもう少し複雑になります。受け取る側の税務上の立場により、課税所得の範囲が異なるためです。
また、リモートワークの所得というのは基本的には給与所得と考えられ、通常の従業員であれば勤務地により、国内で獲得した国内源泉所得であるか、国外で獲得した国外源泉所得であるかが決まります。(役員の場合は取り扱いが変わります。)
このような受取手の立場と所得の源泉地の組み合わせにより、課税関係が変わります。
さらに、状況によっては、支払をする側についての検討や、日本のほかに他国での課税の可能性、租税条約の規定の考慮も必要となることがあります。
このように、従業員が国境を越えていく場合は取り扱いがやや複雑になります。こうした個々の状況に応じた詳細な検討は、従来は特別な従業員に限ってのことであったと思いますが、リモートワークに関連して、このようなご相談が続いているように思います。

まずは給与を支払う会社側からのご相談の例です。コロナ禍の影響で外国人従業員が自国に一時帰国してリモートで勤務していたが、そのまま自国への転居とリモート勤務の継続を希望するようになったというケース。
事態が落ち着いたら従来の勤務に戻る想定であったため、源泉徴収含め、従前の取り扱いを継続していたのですが、従業員の希望を受けて国外からのリモート勤務への変更を検討することになり、ご相談がありました。一時帰国とはいえ、結局これが長期に及び、物理的には従業員は日本から転出している状態にあり、日本での勤務を前提とする雇用契約が継続していることのみが、税務上、日本の居住者として扱う根拠となっているような状況でした。通常であれば、契約を変更することを前提に諸々を整理して出国するため、適切なタイミングで居住者から非居住者へと取り扱いを変えましょう、というところです。このケースは、いわばなし崩しに移行していくこととなったため、いつから非居住者として扱うのか、その切替のタイミングが少々難しくなってしまいました。今回のコロナ禍の影響で、似たようなことがもしかするとあちこちで起きているのかもしれません。