外国で所得税に類する税を課せられた場合、所得税だけではなく、住民税においても外国税額控除の適用があります。ただし、住民税においては、ややマイナーな事項と考えられ、所得税との違いなど、実際の適用において気を使う面があります。

1.個人住民税の外国税額控除

外国で所得税に類する税を課せられた場合、二重課税を排除する目的で、所得税において外国税額控除の制度が設けられています。
納付した外国税が控除限度額を上回っていて全額を所得税で控除しきれない場合には、住民税においても外国税額控除を適用できます。
住民税の控除限度額は、通常、所得税の控除限度額の12%(都道府県民税分)、そして18%(市町村民税分)と算出されます。
納付外国税は、まず所得税で控除限度額までを控除し、控除しきれない税額が残っていれば、都道府県民税、そして市町村民税の順に控除をしていくことになります。

 

2.住民税で外国税額控除を受ける方法

所得税において外国税額控除を適用する際には、「外国税額控除に関する明細書」を作成して申告書に添付する必要があります。
この明細書は、所得税における控除限度額と併せて、都道府県民税や市町村民税における控除限度額も算出し、納付外国税を割り当てる形で各税からの控除額を算出する形式となっています。
所得税の申告書を提出すると、この明細書により、地方自治体が住民税を計算する際に外国税額控除を適用して住民税額を算出します。住民税向けに追加で手続きをする必要はありません。

3.注意点

住民税での外国税額控除適用につき特別な手続きは必要ないのですが、正しく適用されているかの確認は必要です。
地方自治体は、税務署より所得税の申告書の情報を収集し、住民税を計算、課税してくるのですが、外国税額控除の適用もれや控除額の誤りは珍しくないという印象です。
住民税でも外国税額控除の適用がある場合は、住民税の課税通知書を必ず確認するようにしています。
もし適用もれなどがあった場合は、地方自治体に連絡し、先方の資料が不足していれば必要な情報を提供すると、確認して再計算してくれます。

4.さらにマイナーな「控除未済額」

さらに、住民税の外国税額控除にのみ存在する「控除未済額」というものがあり、この金額は「外国税額控除に関する明細書」にも記載されないため、より見落とされやすいといえます。

控除未済額とは、算出された外国税額控除による控除額が、実際の住民税額を上回っている場合に控除しきれずに残った残額です。
所得税の場合は、控除額がその年の所得税額を上回った場合には、その上回った金額だけ還付を受けることができます。住民税の場合は、この還付という取り扱いがなく、残額は3年間繰り越して翌年以降の住民税から控除する仕組みになっています。
「外国税額控除に関する明細書」上では、納付外国税を住民税にも割り振って住民税の控除額を算出すると、控除を適用したものとして扱われ、翌年以降への繰越額には含まれません。控除未済額が生じるケースでは、控除未済額の明細書を追加で作成し、「住民税用」と明記して「外国税額控除に関する明細書」と併せて添付しています。

そうした対応をしても、実際には、控除未済額の適用は相当の頻度で見落とされてしまいます。あるクライアントの場合、外国税額控除を適用した初年度とその後控除未済額による外国税額控除を適用した3年間の計4回で3回の適用もれが起き、その度に修正をしてもらいました。
かなり珍しいケースなのだろうと想像がつくだけに、納税者側で確認する必要性を感じたものでした。