前回触れた住民税外国税額控除の控除未済額について、あまり解説なども見たことがないので、少々補足したいと思います。 

1.規定について

「控除未済額」とは、住民税において外国税額控除を適用した際に、算出された控除額が実際の住民税の額を上回っている場合に控除しきれずに残った残額です。
この控除できなかった額の扱いについては、地方税法施行令の第7条の19第8項と第48条の9の2第9項に、過去3年度内の各年に控除できなかった額をその年の住民税(所得割)から控除すると規定されています。
「控除未済額」というのは、解説書などで使用されている呼称で、法令などでは使用されていません。 

2.適用要件について

この金額の控除を適用する場合、外国税額控除の明細書にこの金額に関しても記載をし、発生した年以降連続してその明細書を添付して申告書を提出する必要があります。
ただし、所得税の「外国税額控除に関する明細書」に、控除未済額の記載をする欄などはありません。個人住民税の申告書の書式として、外国税額控除の明細書や控除未済額の明細書といった書式も、個人的には目にしたことがありません。「外国税額控除に関する明細書」を参考に、同様の明細書を作成し、多少はわかりやすいように、「住民税用」と明記して添付するようにしています。 

3.実際の適用に際して

自治体による課税の際にともかく見落としが起きやすいというのは、前回にも記載したとおりです。外国税額控除自体、見落とされることがありますし、通常の外国税額控除は適用してあっても、控除未済額はもれてしまうというのは珍しくありません。「外国税額控除に関する明細書」に記載欄がなく、別途添付した明細書が見落とされるというのも理解できますし、明細書は入手されていたようなのに適用もれ、ということもありました。内容的に失念されやすいのでしょう。

外国税額控除の他の繰越額と同様に、繰り越して控除ができるのは3年間です。例えば都道府県民税の控除未済額がある場合、納付された外国税があるにもかかわらず、結局、この部分は二重課税が解消されていない状態です。一方で所得税や市町村民税は発生したりします。3年間で利用できればよいのですが、毎年外国税の納付がある納税者の場合は、通常の外国税額控除も適用するため、控除未済額の解消が進まないこともあります。
また、ある方は、控除未済額の利用が可能な最後の年に、突然に多額のふるさと納税をされて寄付金税額控除を大きく適用して住民税額が減少し、控除未済額が未済のまま失効する結果となってしまいました。その年より前に同様のことをされていたら、助言もできたのですが。
所得税の方を重視するとコントロールが難しい部分であり(つまり、所得税額を小さくしようとすると、連動して住民税も小さくなってしまうので)、無事3年内で控除未済額が解消すると安心します。