ある税目については納付、でも別の税目について還付となる場合、わざわざ納税せずに税務署で相殺してもらいたいのであれば、充当申出書を提出するという方法があります。

1.還付税額と納付税額が同時に生じる場合

国税の異なる税目について、一方は納付をしなければならず、同時に他方では還付金が生じることがあります。
私自身の経験したところでは、法人税と地方法人税の確定申告書を提出するにあたり、源泉徴収税額があるために法人税は多額の還付であり、でも地方法人税は若干の納税というパターンがあります。典型的な例が日本で不動産賃料収入を得ている外国法人ですが、日本の法人であっても多額の配当を収入している場合にはこうした状況になることがあります。
通常は、納付税額を納付したうえで、還付金の支払を待つことになると思います。
でも、例えば納付税額が極めて少額である場合、納付の手間を省きたいと考えることもあると思います。例に挙げたように、納税者が外国法人で、納税資金を日本に送金しなければならないような状況であれば、なおさらです。

2.充当申出書

このように還付を受けることになる税額がある場合、納付税額に充当することを書面で申し出ると、そのように取り扱われます。
国税庁や税務署で特定の書式を用意しているわけではないため、「充当申出書」として以下の事項を記載した書面を作成します。

    1. 提出先
    2. 提出日
    3. 納税者の詳細(納税地、住所等、法人であれば名称、代表者氏名、ある場合は納税管理人など)
    4. 税理士氏名、連絡先
    5. 還付金を納付税額に充当したい旨
    6. 納付税額の詳細(税目、金額、事業年度等)
    7. 還付金の詳細(税目、金額、事業年度等)

納付税額の申告書に充当申出書を添付して提出すると、還付金についてはまず納付税額に充当してくれます。

3.国税の還付金の充当について

国税の還付金がある場合、未納の国税があれば未納税額に充当されることが、税法上定められています。納税者側からの申出がなくても、法定納期限が到来し、納付税額が確定しているのに未納の税額があれば、充当がされることになります。とはいえ、法定納期限が到来する前の税額について、予め納税者側から充当を申し出る場合には書面による申出が必要とされていますし、納税者からの申出が不要なケースであっても、納税者からも意思表示を行う方が、実際の処理がスムーズに進められるだろうと思います。
還付金による未納税額への充当がされた場合、通常は、納付税額の法定納期限(法定納期限後に、申告により納付税額が確定した税額については申告があった時)と還付金が生じた時とのうち、遅い方の時点で納付があったものとされます。法定納期限の前に充当申出を行ったケースでは、申出日に納付があったものと扱われます。