「決算時のtax provision 計算の精度を上げたい。」立て続けに複数のクライアントからご相談がありました。前年の計算結果と最終的な確定納付額とに大きな差異があったことをきっかけに出てくる要望ですから、計算プロセスを改善するには、前回の計算方法を検証するのが近道です。

1.ワークシートによるtax provision 計算の検証

決算時のtax provision 計算を自社で行っている場合、エクセルのワークシートを使用していることが多いと思います。
エクセルを使用した場合、その際の計算シートを利用して検証用のワークシートを作ることができます。

    1. 決算時の計算列の隣に列を追加し、この列に確定額をインプットします。
    2. i の列の隣にもう1列を追加し、決算時の数値と確定額との差異を表示します。

同じシートに両方の計算過程と差異を並べて表示することで、差異の発生している項目が見えやすくなります。
決算時にシステムを利用して計算している場合は、同じシステムに最終的な申告額をインプットして比較すれば、差異発生箇所を特定しやすくなります。(決算時から税務申告用システムを利用している場合は、わざわざ作業する必要はなく、両方の計算を改めて比較するだけで足りると思います。)

2. tax provision 計算の各ステップの検証

計算過程の全てを検証する時間がないという場合は、各ステップの計算結果を確定額と比較することで、どのステップに差異要因があるか、見当をつけることができます。
例えば外資系法人の場合、tax provision 計算はおおまかに次のようなステップを経て行われると思います。日系の法人など、下記の ii のステップがない場合は i と iii のステップで比較します。

    1. 当期の決算額の確定(グループが採用している会計基準による)
    2. 日本の決算額の確定(いわゆるGAAP 調整後の日本の会計基準による)
    3. 課税所得金額・法人税額等の計算

i と ii のステップについては、税引前当期利益の額を比較します。計算結果の差異が大きいステップについて、その計算過程を比較して差異要因を特定します。
この比較方法では、全ての差異発生要因を把握することは難しいのですが、影響が大きく、優先的に改善すべき事項から把握して、取り組むことができます。

3.tax provision 計算プロセス改善のための対応

金額の大きな差異が生じている項目を特定できれば、それぞれの項目に応じた具体的な改善策を検討、実施することができます。
例えば、

    1. 計算方法、計算式などの誤り→計算方法、計算式などの修正、更新、
    2. 決算値そのものの誤りや決算時の情報未達による差異→事前の情報収集や決算時作業スケジュールの見直しなど、
    3. 上記の対応による改善が期待できない事項→差異額の見積もり可否の検討など。

こうした改善策を施したうえで、決算前、前月や前四半期のタイミングで、tax provision 計算の予行練習を行うことも有効です。
決算時は時間も限られるため、決算の数カ月前の時間のあるうちに上記のような対応を行っておくと、決算時の計算はスムーズに進められるでしょう。