分割があった場合、分割により資産・負債(あるいは事業)を受け入れた分割承継法人は、分割以後の消費税に関して、分割法人の状況も加味して判定や計算を行う必要があります。
今回は特に吸収分割の場合の分割承継法人の仕入税額控除に関連した留意点に触れたいと思います。

1.分割承継法人の分割事業年度・分割翌事業年度の納税義務

吸収分割があった事業年度について、もともと分割承継法人が免税事業者である場合は、分割法人の“基準期間に対応する期間の課税売上高”によっても納税義務判定をする必要があります。これが1,000万円超であると、吸収分割の日以後の納税義務は免除されないことになります。
期中に分割があってこの規定の適用を受ける場合、その事業年度の期首から分割の日の前日までの期間は免税事業者、分割の日から期末までの期間は課税事業者となり、1課税期間のうちに免税事業者の期間と課税事業者の期間が生じることになります。

吸収分割があった事業年度の翌事業年度についても、もともと分割承継法人が免税事業者である場合は同様に判定し、分割法人の“基準期間に対応する期間の課税売上高“が1,000万円超であると、この事業年度の納税義務は免除されません。

“基準期間に対応する期間の課税売上高”は、分割承継法人の分割事業年度またはその翌事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年の間に終了した分割法人の事業年度の課税売上高を合計し、12ヶ月ベースに引き直して計算することとされています。分割承継法人と分割法人の決算期が一致している場合は、通常、分割承継法人の基準期間と一致する事業年度の課税売上高を参照することになります。

2.分割承継法人の分割事業年度の仕入税額控除

分割事業年度において、上記1番で説明したような分割法人の課税売上高により分割の日以後課税事業者となったケースでは、仕入税額控除も課税事業者の期間に発生した課税仕入と課税貨物に係る税額について控除可能となります。
課税事業者のみが税額控除を適用できるため当然の取り扱いですが、具体的には消費税法基本通達11-1-8に明記されています。
正しい計算のためには、分割前の期間と分割以後の期間に区分して、取引を把握する必要があります。

なお、このようなケースでは、免税事業者から課税事業者となることから、棚卸資産に係る税額の調整規定の適用も考えられます。

3.分割承継法人の分割事業年度の仕入税額控除・簡易課税の適否

吸収分割により免税事業者から課税事業者となった分割承継法人の特例として、分割があった事業年度に簡易課税選択届出書を提出することで、その事業年度から簡易課税適用が可能となるという取り扱いがあります。要件としては、上記1番で触れた、分割法人の課税売上高により判定した結果、免税事業者から課税事業者となるケースで、もともと分割法人が簡易課税の適用を受けていた場合に認められるものです(詳細は消費税法施行令56条、基本通達13-1-3の4に規定されています)。

簡易課税の適用自体に関しては、吸収分割の分割承継法人の場合は、分割承継法人の基準期間の課税売上高が5,000万円以下であるかのみで、判定をすることとされています。

4.消費税法における分割の区分

消費税法において、分割は新設分割(「分割等」に含まれる)と吸収分割に区分して規定がおかれています。新設分割の場合は、吸収分割とはまた違った取り扱いがあり、注意が必要です。